大根の夜
芸術、農業、伝統が交差する祭り
2025/12/22
毎年12月23日、オアハカのソカロ(中央広場)は巨大なラディッシュ(大根)彫刻が並ぶ活気あるギャラリーに変わります。「大根の夜(Noche de Rábanos)」は、オアハカのクリスマスシーズンを彩る一夜限りの奇祭で、地元農家が育てた特大ラディッシュを彫刻作品に仕上げる姿は圧巻です。観光客でも「2ヶ月かけて育てた50cm級の大根を彫る職人技」や「終了後にトラックから大根を撒き、地元住民が持ち帰る賑やかな光景」など、オアハカならではの臨場感を体感できます。
主な見どころ
特大ラディッシュの彫刻アート
祭りの中心となるのは、精巧に彫られたラディッシュの彫刻です。このイベントのために特別に育てられた巨大なラディッシュは、キリスト降誕の場面やオアハカの伝統(例えば死者の日)、神話上の生き物、地域のフォークロアなどを描いた壮大なシーンに変身します。その創造性は圧倒的で、一部のラディッシュは10ポンド(約4.5キログラム)もの重さがあり、長さは2フィート(約60センチ)にも達します。
隠れた主役:トウモロコシの皮とドライフラワーの共演
ラディッシュ彫刻以外にも、「トトモクスレ・ナチュラル」(トウモロコシの皮)や「フロール・インモータル」(乾燥花)という2つのカテゴリーで競技が行われます。これらの展示も同様に見事な職人技を披露し、オアハカの芸術的遺産をより広く紹介しています。
ライブ音楽と花火で盛り上がる夜
祭りの雰囲気をさらに盛り上げるのは、ライブ音楽や民族舞踊、そして花火です。これらの要素が彫刻の視覚的な魅力を補完し、感覚的な祝祭を作り上げます。
幸運を呼ぶ陶器皿割りと地元料理・名物スイーツ
祭りではラディッシュ自体は食べられませんが、ブニュエロ(シロップをかけた揚げ菓子)、ポンチェ(温かいフルーツパンチ)、アトーレ(トウモロコシベースの濃厚な飲み物)などを楽しむことができます。また、ブニュエロを盛り付けるために使われた陶器皿を割ることは幸運を呼ぶとされています!
文化的・歴史的背景
「大根の夜」の起源は1897年12月23日の公式イベント化以前にさかのぼります。植民地時代、ドミニコ会修道士が先住民サポテコ族やミステコ族に彫刻技術を伝えたことが発端とされ、当初はクリスマス市場で野菜売り場を華やかにするための工夫でした。農民たちはカリフラワーの葉や玉ねぎの花で装飾を施し、徐々に競技的な要素が加わっていきました。
現在のような大規模イベント化の転機は、スペイン統治時代に導入されたラディッシュが地元の風土に適応し、彫刻用に品種改良されたことです。祭り専用に栽培されるラディッシュは通常の5倍のサイズに成長し、中には長さ50cm・重さ3kgに達する特別栽培品が使用されます。農家は2ヶ月前から作品の構想に合わせて種を選び、20日頃から徹夜で彫刻作業に没頭します。
この祭りが先住民文化と植民地文化の融合点であることは特筆すべき特徴です。キリスト教の降誕劇と先住民の収穫儀礼が共存し、現代では「トトモクストレ」(トウモロコシの皮)や「フロール・インモルタール」(ドライフラワー)の部門が追加され、オアハカの多層的な文化を表現しています。祭りの終盤、トラックで運ばれた余剰の大根を市民が持ち帰る光景は、共同体の結束力を象徴する伝統的行事として定着しています。
現在では約125年の歴史を持つこの祭りは、単なる芸術競技を超え、先住民の技術継承システムとして機能しています。祖父母から孫世代へと受け継がれる彫刻技術は、オアハカのアイデンティティ形成において極めて重要な役割を果たしているのです。
参加者の声
Instagramで#NocheDeRábanosを検索したら、巨大なラディッシュで作った彫刻の写真に衝撃を受けて行くことを即決しました。現地で驚いたのは、農家の方が『この作品は2ヶ月かけて栽培した特別品』と教えてくれたこと。彫刻の細部までこだわる職人たちの手元を間近で見られる展示スタイルが最高でした!夜9時過ぎてもソカロ広場は音楽と笑い声であふれ、地元の家族連れが『この大根像、うちの叔父が作ったんだよ』と自慢し合う光景が印象的でした。屋台で買ったブニュエロを食べ終わった後、おばあちゃんが『お皿を割るのよ、幸運が訪れるわ』と教えてくれたのが現地ならではの体験でした。
面白い事実
- 祭り用ラディッシュ栽培専用の場所が市によって設けられています。
- ラディッシュは重さ10ポンド以上(約4.5kg)にもなることがありますが、大量肥料使用により食用には適していません。
- 彫刻コンテスト優勝者には12,000ペソ(約8万円)の賞金が授与されます。
祭りの日程
この祭りは毎年12月23日にオアハカ市内中央広場(ソカロ)で開催されます。
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