セント パトリック デー パレード
緑の川と笑顔が溢れる祝祭
毎年3月、シカゴの街はエメラルドグリーンに染まり、セントパトリックスデーの祝祭が盛大に開催されます。この祭典は、セントパトリックスデーの前の土曜日に行われ、約40万人の観客が集まる大規模なイベントです。祭りの目玉は、シカゴ川の染色とそれに続くパレードです。
パレードでは、アイルランドの文化を象徴する緑色の衣装を身にまとった参加者たちが、観客に手を振りながら行進します。バグパイプの音色、アイリッシュ・ステップダンスのリズミカルな足音、そして観客の歓声が街中に響き渡り、シカゴの中心部がアイルランド文化一色に染まります。この祭りは、アイルランド系アメリカ人の誇りを称えるとともに、シカゴの多様性を祝う重要な文化イベントとして、地元の人々はもちろん、世界中から訪れる観光客にとっても、アイルランド文化の豊かさを体感できる貴重な機会となっています。
主な見どころ
エメラルドの川
祭りは午前10時、シカゴ川の染色から始まります。シカゴ配管工組合ローカル130のメンバーが、特別な船から秘密の植物性染料を川に注ぎ込みます。すると、普段は濁った灰色がかった川の水が、まるでアイルランドの緑野のような鮮やかなエメラルドグリーンに変化します。この驚くべき光景は、ステート通りからコロンバス通りまでの間で最もよく見ることができます。アッパー・ワッカー・ドライブや川にかかる橋の上に40万人以上の観客が集まり、歓声を上げながらスマートフォンやカメラで撮影します。この鮮やかな緑色は約5時間持続し、その後徐々に薄れていきます。
盛大なパレード
午後12時15分、バルボ通りとコロンバス・ドライブの交差点からパレードが華々しく始まります。先頭を飾るのは、1956年の第1回公式パレードから参加しているシャノン・ローバーズ・アイリッシュ・パイプ・バンドです。彼らの伝統的なキルト姿と、バグパイプとドラムの力強い音色が、観客を一気にアイルランドの雰囲気に引き込みます。続いて、100以上のフロートやマーチングバンドが3時間かけてコロンバス・ドライブを北上します。特に目を引くのは、アイルランドの伝統的な衣装を身にまとったアイリッシュ・ステップダンサーたちで、その華やかな緑のドレスが風に揺れる中、複雑なステップを軽やかに踏む姿に、沿道から大きな拍手が送られます。
祝祭の衣装と装飾
パレードの日、シカゴの街は文字通り緑一色に染まります。参加者たちは思い思いのセントパトリックスデーの衣装を身につけ、創意工夫を凝らします。エメラルドグリーンのウィッグや顔全体に施されたシャムロックのフェイスペイント、金色のバックルが付いた靴を履いたレプラコーン(アイルランドの妖精)の完全な扮装など、その姿は実に多様です。フロートには巨大なシャムロック(三つ葉のクローバー)やケルト十字が飾られ、アイルランド国旗がはためきます。街路樹にも緑のリボンが結ばれ、街全体がお祭りムードに包まれます。
アイルランド料理の楽しみ
パレードルートに沿って、70以上のフードブースが立ち並びます。シカゴ名物の「コーンビーフ&キャベツ」の香ばしい香りが漂い、毎年2,000ポンド(約900kg)以上が提供されます。アイルランドの伝統的なソーダブレッドも人気で、その独特の風味と食感を楽しむ人々で賑わいます。飲み物では、緑色に着色されたビールが大人気。パブやバーでは、アイリッシュウイスキーを使ったカクテル「アイリッシュコーヒー」も振る舞われます。デザートには、緑色のアイシングで装飾されたシャムロッククッキーや、ミントフレーバーのアイスクリームなど、この日ならではの特別メニューが並びます。
文化的・歴史的背景
シカゴ・セントパトリックスデー・パレードの歴史は、アイルランドからの大規模な移民の波と深く結びついています。1843年3月17日、シカゴで最初の非公式なセントパトリックスデー・パレードが開催されました。当時の大元帥「スマイリング・ジョン」ダブリンが率いるパレードは、クラーク・ストリートからミシガン・アベニューを南下し、セント・メアリー教会で終わりました。この時期、アイルランドのジャガイモ飢饉を逃れて多くの移民がシカゴに到着し、1850年代までにシカゴの人口の約20%をアイルランド系が占めるようになりました。
現在の形式での公式パレードは1956年に始まり、以来、シカゴのアイルランド系コミュニティの誇りと文化を祝う中心的なイベントとなっています。特筆すべきは、1962年に始まったシカゴ川を緑色に染める伝統です。この独特な習慣は、偶然から生まれました。シカゴ配管工組合ローカル130のメンバーが、建物の水漏れを追跡するために使用していた蛍光緑色の染料が、川を染めるのに適していることを発見したのです。当初は有害な物質を使用していましたが、現在は環境に優しい秘密の植物性染料を使用しています。
今日、シカゴのセントパトリックスデー・パレードは、単なるアイルランド系アメリカ人の祭典を超えて、シカゴ市民全体の春の到来を祝う象徴となっています。毎年約40万人の観客を集め、3時間以上続くパレードには100以上のフロートや団体が参加します。パレードには、シカゴ市長や州知事も参加し、政治的にも重要なイベントとなっています。また、このイベントは経済的にも大きな影響を与え、レストランやバーは緑色のビールや特別メニューを提供し、観光業にも大きな恩恵をもたらしています。
このように、セントパトリックスデー・パレードは、シカゴの多文化共生の象徴となり、アイルランド系以外の市民も含めた全ての人々が参加し楽しむ、市を代表する文化イベントへと進化を遂げています。
参加者の声
エネルギーが素晴らしくて、私たち全員が特別な何かの一部になった気分でした。子供たちは川が緑色に変わる様子に夢中になり、妻と私は観客と一緒に歌ったり踊ったりしました。隣にいた年配のカップルが『アイリッシュ・アイズ・アー・スマイリング』の歌詞を教えてくれて、それ以来ずっと口ずさんでいます。街全体が一緒になって祝う姿を見るのは素晴らしかったです。この旅行は、私たち家族にとって一生忘れられない思い出を与えてくれました。
面白い事実
- 川染色で使用される環境に優しい染料は厳重な秘密であり、ごく一部の配管工組合メンバーしか知らないと言われています。
- 2009年にはホワイトハウス南芝生でもこの伝統が行われ、大統領によって祝福されました。
祭りの日程
シカゴ・セントパトリックスデー・パレードは通常、セントパトリックスデー前土曜日に開催されます。
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