聖母サルー祭

信仰、伝統、そしてコミュニティの織りなす絵巻

バレンシア州アルジェメシの中心部で、毎年9月に何世紀も続く祝祭が繰り広げられ、町全体が色彩、音楽、そして信仰心に彩られた生きたキャンバスへと変貌を遂げます。町の守護聖人を称える聖母サルー祭は、宗教的熱意と文化的誇りを見事に融合させ、その壮観な様子がユネスコ無形文化遺産に登録されています。8月29日から9月8日にかけて、1247年にさかのぼる伝統の担い手として約1,400人の地元民が演者となり、訪れる人々にスペインの伝統文化の真髄を目の当たりにする機会を提供します。

主な見どころ

3つの行列

祭りの中心となるのは3つの主要な行列です。9月7日、夕暮れ時に「誓いの行列」が始まります。空気は甘い香りの線香と、聖書の物語を再現する短い宗教劇「エルス・ミステリス」を演じる子供たちの歌声で満たされます。狭い石畳の通りには、踊り手たちのリズミカルな足音と、伝統的なドルサイナ笛の神秘的な旋律が響き渡ります。

翌朝の「朝の行列」では、アラゴン王ハイメ1世とハンガリー女王ヴィオランテの巨大な人形が行列に加わり、その色鮮やかな衣装を揺らしながら群衆の頭上を行進します。祭りのクライマックスは夕方の「ヴォルタ・ヘネラル」で、聖書の登場人物や使徒たちが生き生きと再現され、その華麗な衣装が街灯の温かな光の中で輝きます。

人間の塔(ムシェランゲス)

おそらく最も息をのむ光景は、人間の塔「ムシェランゲス」の形成でしょう。群衆が息を潜める中、敏捷な登り手たちが人間の構造物を登っていきます。彼らの色鮮やかな伝統衣装が、アルジェメシの歴史的な建築物を背景に動きのぼやけた一筋となります。タバルと呼ばれる太鼓の音が緊張感を高め、塔が高くなり、最後に、一人の子供が頂点に到達し、空に向かって手を挙げる瞬間、観客から歓声が沸き起こります。

伝統的な踊りと音楽

祭りを通して、街中がさまざまな伝統舞踊で活気づきます。バストネッツ(カタルーニャ地方の伝統的な棒踊り)の踊り手たちは木の棒を使って演技し、まるで石畳さえも振動させるような打楽器のリズムを生み出します。アルケッツの踊り手たちは、花で飾られたアーチを持ち、優雅な動きで空中に色の渦を描きます。そしてずっと、ドルサイナ(バレンシア地方で使われる伝統的な管楽器)とタバレット(バレンシア地方の伝統的な打楽器)が絶え間ない音楽的背景を提供し、その古代の旋律が何世紀もの伝統の重みを運んでいます。

美食の喜び

祭りに欠かせないのが、その土地ならではの料理です。焼きたてのパンケマドス(地元の甘いパン)の香りが街中に漂います。来訪者は、アルナディ(カボチャとアーモンドのお菓子)を味わうことができ、その甘さは、地域の農業の根源を物語るウナギとジャガイモのシチュー、アリ・イ・ペブレ(スペインのバレンシア地方の伝統的な料理)の塩味と見事に調和します。地元のワインが惜しみなく振る舞われ、その豊かな香りが祝祭の空気に溶け込みます。

文化的・歴史的意義

聖母サルー祭の起源は1247年にさかのぼります。伝説によると、地元の農夫が桑の木の中に聖母マリアの像を発見したことがきっかけでした。この奇跡的な発見が、何世紀にもわたって強まり続ける信仰心を呼び起こしました。現在の形の祭りは16世紀頃から形作られ始め、宗教的熱意と文化的表現が豊かに織り交ぜられた姿へと発展しました。

アルジェメシの人々にとって、この祭りは単なる観光名所をはるかに超えるものです。それは彼らのアイデンティティの生きた化身であり、過去を称えながらその継続性を未来に確保する方法なのです。祭りは、世代を超えて受け継がれる参加を通じて、毎年コミュニティの絆を更新する役割を果たしています。それは町の回復力を思い起こさせるものでもあり、戦争、政治的変化、社会の変遷を乗り越えて、常にこの共有された信仰と文化の表現に立ち返ってきたのです。

参加者の声

特に印象的だったのは、ムシェランガと呼ばれる人間の塔です。9段の高さまで積み上がる様子は息をのむほど壮観でした。塔の頂点に立つ子供が手を挙げた瞬間、周りから大きな歓声が上がり、私も思わず涙が出そうになりました。また、バストネッツの踊り手たちが木の棒を打ち合わせて生み出すリズムは、体の中に響き渡るようでした。地元の方に聞いたところ、この踊りは悪霊を追い払う意味があるそうです。夜の行列では、聖母マリアの像を担ぐ人々の真剣な表情に、この祭りが単なる観光イベントではなく、深い信仰に基づいていることを実感しました。

面白い事実

  • この祭りには1,400人以上の参加者が関わっていると言われており、これはアルジェメシの人口のほぼ10%に当たります。
  • 祭りで使用される衣装、装飾品、アクセサリーはすべて地元の職人によって手作りされ、伝統的な技法が保存されています。
  • 踊りの音楽は世代から世代へと口伝えで伝えられ、楽譜は使用されません。
  • 人間の塔は最大9段の高さに達することがあり、最も若く軽い参加者が頂上の層を形成します。
  • 2011年にこの祭りがユネスコの無形文化遺産リストに登録された際、特別なムシェランガ形成が行われ、上空から見ると「UNESCO」の文字が浮かび上がりました。

祭りの日程

聖母サルー祭は毎年8月29日から9月8日まで開催され、主要なイベントは9月7日と8日に行われます。

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実際の様子


開催情報

名称 聖母サルー祭
スペイン
エリア バレンシア州, アルヘメシ
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