タブレイロスの祭り

パンと花と連帯が彩る、トマールの壮麗な祝祭


2023/07/01 - 2023/07/09

4年に一度、ポルトガル中部トマールの町が「タブレイロス祭り(Festa dos Tabuleiros)」で色と伝統に包まれます。7月上旬の10日間、テンプル騎士団の歴史が息づくこの町には何十万人もの人々が集い、最大の見どころは、パンと花で飾られた巨大なタブレイロ(トレイ)を頭上に載せた女性たちが練り歩く壮観なパレード。歴史や文化が好きな人はもちろん、非日常を味わいたい全ての人にとって、五感で体験するポルトガル屈指の伝統行事です。

メインパレードは一生に一度は見たい圧巻の光景ですが、期間中は町全体が舞台。通りは何百万本もの手作り紙花で埋め尽くされ、バルコニーにはカラフルなキルトが飾られ、パンの香りや音楽、笑い声があふれます。世代や地域を超えて、トマールの人々と訪問者が一体となる、連帯と芸術、信仰の祭典です。

主な見どころ

タブレイロスのパレード(Cortejo dos Tabuleiros)

祭りの中心は「タブレイロスのパレード」。700人以上の女性や少女が純白の衣装にカラフルなサッシュを身につけ、頭上に自分の背丈ほどもあるタブレイロを載せて練り歩きます。タブレイロは30個のパン(各約400g)を竹の棒に通し、麦の穂や何千もの紙花で豪華に装飾。頂上には聖霊の象徴である白い鳩やキリスト十字の王冠が輝きます。

女性には黒ズボンと白シャツ、サッシュに合わせたネクタイ姿の男性パートナーが付き添い、重さに耐えきれない時はサポート。5kmにわたるパレードルートには花で飾られた通りと群衆、教会の鐘、花びらの雨、子どもたちの小さな花かごパレード、バンドの演奏が彩ります。

装飾された通り・伝統ゲーム・夜の音楽

「ルアス・ポプラーレス・オルナメンターダス(装飾通り)」は祭りの名物。住民たちが何カ月もかけて数百万本の紙花でテーマごとに通りを飾り、町全体がアート空間に変身。最優秀通りを競う審査もあり、発表の夜は大盛り上がりです。

その他にも「少年たちの行列」「モルドモ(世話役)行列」、伝統ゲームや部分パレードがあり、夜は公園でファドやジャズなど様々なコンサートが開催。炭火焼き肉や地元ワインの香りが夜風に漂います。

衣装とデコレーション

女性は白いブラウスと重ねスカート、カラフルなサッシュ、ベージュのスエードシューズを着用。男性は黒ズボンに白シャツ、サッシュに合わせたネクタイ。タブレイロはパン・麦・花の塔で、家やバルコニーにはキルトや紙花が飾られ、町全体が夢のような色彩に包まれます。

伝統グルメとふるまい

パンは祭りの象徴であり主役。ロースト肉やソーセージ、チーズ、伝統菓子も味わえます。パレード翌日の月曜には「ペーザ」と呼ばれる炊き出しがあり、祝福されたパンや肉、ワインが貧しい人や参加者にふるまわれ、祭りの精神である分かち合いが体現されます。

文化・歴史的背景

タブレイロス祭りの起源は13〜14世紀に遡り、古代ローマ以前の豊穣祈願とカトリックの「聖霊信仰」が融合したものです。聖イザベル女王(後の聖エリザベート)が創設した聖霊兄弟会が、貧しい人のための寄付と普遍的な連帯を広める目的で制度化しました。

タブレイロは各家族からの奉納を象徴し、天上のエルサレム建設の象徴とも言われます。パン・麦・花はキリスト教と古代の豊穣信仰が重なり合うシンボルであり、現代の祭りの形は1950年に定着しました。トマール周辺の村々では「皇帝の戴冠」や「ボド(祝宴)」など古い儀式も今なお残っています。

現在、タブレイロス祭りはポルトガル最大級・最古の祭りの一つで、パレードには最大60万人が集まることも。トマールの誇りと連帯、寛容の象徴です。

参加者の声

「海外からこのパレードを見るために来ました。色彩、音楽、焼きたてパンや花の香り…夢の中にいるようで、トマールの人々は本当に家族のように迎えてくれました。」

豆知識

  • 各タブレイロの頂上には白い鳩(聖霊)やキリスト十字の王冠が飾られます。
  • 通りの装飾用紙花は住民が1年かけて手作りし、その数は数百万本にのぼります。
  • タブレイロの伝統は、古代ローマの豊穣女神ケレスの祭りにもルーツがあると言われています。

開催日程

タブレイロス祭りは4年に一度、トマールで開催されます。圧巻のパレードと分かち合いの精神に満ちたこの祝祭を、ぜひ現地で体感してみてください。

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実際の様子


開催情報

名称 タブレイロスの祭り
ポルトガル
エリア トマール
開催時期 2023/07/01 - 2023/07/09
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