ジプシーの巡礼
信仰とロマ文化の鮮やかな融合
2026/05/23 - 2026/05/25
毎年5月、フランス南部の小さな沿岸の町サント・マリー・ド・ラ・メールは、何千人ものロマの人々がジプシー(ジタン)の巡礼(Pèlerinage des Gitans)のために集まり、色彩、音楽、信仰の万華鏡へと変貌します。5月24日から26日にかけて行われるこのユニークな巡礼は、ロマの人々の守護聖人である聖サラを称え、宗教的熱意と文化的祝祭が見事に融合し、約1世紀にわたって参加者と見物人の両方を魅了してきました。
主な見どころ
聖サラの行列
祭りのハイライトは5月24日に行われる、聖サラの像を教会から海へ運ぶ行列です。祈りの律動的な詠唱が空気を満たす中、色鮮やかなスカーフで飾られた黒いスーツに身を包んだロマの男性たちが、花で彩られた聖像を肩に担ぎます。行列は歓声を上げる群衆に囲まれた狭い通りを進み、聖像が地中海に運ばれると、信者たちは海に入り、「聖サラ万歳!」という熱烈な叫びがビーチ中に響き渡ります。
聖遺物の降下
要塞化された教会の内部では、また別の光景が繰り広げられます。聖マリア・ヤコベと聖マリア・サロメの聖遺物が、高い礼拝堂から華やかな箱に入れられてゆっくりと降ろされます。教会内には伝統的なロマの歌の魅惑的な旋律が響き渡り、何百本ものろうそくのちらつく光が古い石壁に踊る影を投げかけます。何世紀もの伝統に根ざしたこの厳粛な儀式は、外の陽気な祝祭とは対照的な雰囲気を醸し出します。
ジプシーマーケット
サント・マリー・ド・ラ・メールの街路は、ロマの職人たちが自らの工芸品を披露する活気あふれる市場で賑わいます。手作りの宝飾品の金属音、革製品の大地の香り、伝統的な織物の色鮮やかな渦が空気を満たします。訪問者はパラチンタ(甘いクレープ)やグーラッシュなどのロマ料理を味わうことができ、その豊かな香りが塩気を帯びた海風と混ざり合います。
文化的・歴史的背景
ジプシーの巡礼は、ロマの人々がキリスト教を広めるためにフランスに到着した三人のマリアの侍女だったと信じる聖サラの伝説に起源を持ちます。この町は長年キリスト教の巡礼地でしたが、特定のロマの祝祭は1935年に始まりました。その年、バロンセリ・ジャヴォン侯爵が聖サラの像を行列に含めることを提唱したのです。
この巡礼は、ロマの人々にとって重要な文化的イベントです。祭りの中心となるのは、バイオリンとツィンバロムを主体とするロマ音楽です。ツィンバロムは金属製の弦をハンマーで叩く打弦楽器で、ロマ楽団には欠かせない存在です。祭りでは、チャールダーシュと呼ばれる舞曲が演奏され、テンポや強弱の激しい変化、細やかなリズム、そして独特のハンガリー音階を用いた旋律が特徴となっています。これらの音楽は、ロマの人々が各地を旅する中で発展させ、現地の音楽文化と融合させてきた歴史を反映しています。
また、この祭りはヨーロッパ各地のロマのグループが集まる稀な機会となっており、彼らの芸術や伝統を披露し、次世代に継承する場としても重要な役割を果たしています。19世紀から20世紀初頭にかけて、多くのクラシック音楽の作曲家がロマ音楽のエッセンスを取り入れた作品を生み出すなど、ロマの音楽文化はヨーロッパの音楽史にも大きな影響を与えてきました。
参加者の声
フランス旅行中に偶然この祭りに出くわしましたが、これまでで最も素晴らしい経験となりました。海への行列は、私がこれまで見たことのないようなものでした。その献身、色彩、音楽!私はその感動に心を奪われました。数百人のロマの人々が海に入り、聖サラの像を掲げる様子は圧巻でした。私はロマでもカトリック教徒でもありませんが、とても歓迎されていると感じました。この祭りは、私が知らなかったヨーロッパの一面を見せてくれました。
面白い事実
- 聖サラの像は定期的に着替えられる色鮮やかな衣装を着ており、その衣に触れると幸運がもたらされると多くの人が信じています。
- 祭りの期間中、町の人口は約2,500人から25,000人以上に膨れ上がります。
- 多くのロマの家族は、聖サラが到着したと信じられている同じ海で子供たちに洗礼を施す機会として、この巡礼を利用しています。
- この地域原産のカマルグ馬が行列で重要な役割を果たし、地元の守護者(カウボーイ)が馬に乗って聖像をエスコートします。
- サント・マリー・ド・ラ・メールの教会は9世紀から12世紀にかけて建てられ、サラセン人の侵略から身を守るための要塞として機能しました。
祭りの日程
ジプシーの巡礼は毎年5月24日から26日まで行われます。
開催日程は変更になる場合があります。最新の情報は公式サイトなどをご確認ください。
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