モンスのデュカス祭り
ドラゴンの咆哮が街をひとつにする伝説と歓喜の一週間
2025/06/07 - 2025/06/15
毎年春、ベルギーのモンスの街は「デュカス祭り(ル・ドゥドゥ)」と呼ばれる一週間の大祭で熱気に包まれます。ユネスコ無形文化遺産にも登録されたこの祭りの最大の見どころは、聖ゲオルギウスとドラゴンの壮絶な戦いの再現劇。ベルギー国内外から10万人以上が訪れるこの伝統行事は、歴史が好きな人はもちろん、地元の一体感や熱気を味わいたい人にもおすすめです。
観客の大歓声、焼きたてワッフルやビールの香り、巨大なドラゴン人形が中世の街並みを進む姿…。この一週間、モンスの街は伝説が現実になる舞台となり、誰もが家族のように心をひとつにします。
主な見どころ
ルムソン(聖ゲオルギウスとドラゴンの戦い)
祭り最大のハイライトは、グランプラス(中央広場)で繰り広げられる「ルムソン」と呼ばれる聖ゲオルギウスと巨大ドラゴンの戦い。緑色の鱗と大きな口を持つドラゴンに、聖ゲオルギウスとその仲間たちが立ち向かいます。町の若者たち「白い男たち」が英雄を守りながら、ドラゴンの尻尾をつかもうと奮闘。木製の剣がぶつかる音、紙吹雪が舞う中での熱狂は、まさにモンスの魂そのものです。
行列とパレード
祭り期間中は、聖ワルトルードゥ(モンスの守護聖人)の聖遺物を運ぶ厳かな行列や、ギルドやブラスバンド、花で飾られた山車が街を練り歩く華やかなパレードも開催。太鼓のリズムや音楽、笑い声が石畳の街に響き渡ります。
衣装と装飾
参加者は中世の騎士や町人、ドラゴンや天使など、色とりどりの衣装を身にまといます。グランプラスや周辺の通りはバナーや花、ドラゴンをモチーフにしたアートで彩られ、ショップのウィンドウにも祭り限定の飾りが並びます。ドラゴンの尻尾に触れると一年の幸運が訪れるとされ、伝統衣装のざらっとした手触りや、街全体が赤と緑に染まる光景も印象的です。
伝統グルメ&ドリンク
ベルギーの祭りに欠かせないのが屋台グルメ。デュカス祭りでは、黄金色のフリッツ(フライドポテト)、焼きソーセージ、濃厚なワッフル、地元のビールなどが並びます。グリルの香りや焼き菓子の甘い匂いが広場に広がり、家族や友人とピクニックを楽しむ人々の姿も。
文化・歴史的背景
デュカス祭り(Ducasse de Mons)の起源は、1349年にモンスの街を襲ったペスト(黒死病)にさかのぼります。当時、疫病の終息を願い、聖ワルトルードゥ(Sainte Waudru/聖ワルトルードゥ)の聖遺物を街中で巡行させる「カリヨン行列(Car d'Or)」が初めて行われたと伝えられています。この巡行をきっかけに疫病が収まったとされ、以降、毎年聖遺物を載せた黄金の馬車(カール・ドール)が街を練り歩く伝統が続いています。
15世紀になると、キリスト教の「善と悪の戦い」を象徴する聖ゲオルギウスとドラゴンの戦い(ルムソン)が祭りに加わりました。聖ゲオルギウスがドラゴンを退治する劇は、悪疫や災厄に打ち勝つ希望と勇気の象徴として、モンス市民に深く根付いていきます。ルムソンはグランプラス(中央広場)で行われ、町中が熱狂的な一体感に包まれます。
この祭りは、宗教的な巡行と民間伝承、そして市民参加型の祝祭が融合した独自の形で発展し、現在では1週間にわたり10万人以上が訪れるベルギー最大級の伝統行事となりました。祭りの準備や役割は家族や地域コミュニティで受け継がれ、子どもから大人までが世代を超えて参加します。
2005年には「ベルギーとフランスの巨人とドラゴンの行進(Processional giants and dragons in Belgium and France)」の一部としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。デュカス祭りは、モンス市民の誇りとアイデンティティ、そして困難を乗り越えてきた歴史を象徴する“生きた伝統”として、今も大切に守られています。
参加者の声
オランダから観光で来ましたが、地元の家族とピクニックを一緒に楽しみながら、祭りが老若男女をつなぐ理由や、ドラゴンがモンスにとってどれほど大切な存在かを教えてもらいました。街の熱気と一体感に圧倒されました。
豆知識
- ドラゴン人形「ル・ドラゴン」は全長10メートル以上、数十人が操作する。
- ルムソンでドラゴンの尻尾をつかむと一年の幸運が訪れると言われている。
- 「ル・ドゥドゥ」は地元の人が親しみを込めて呼ぶ祭りの愛称。
開催日程
デュカス祭りは毎年5月下旬から6月上旬にかけて、ベルギー・モンスで開催されます。詳しい日程やプログラムは公式サイトやモンス観光局でご確認ください。
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