オタリー・セント・メアリー・タールバレル祭り

毎年11月5日、デヴォン州の静かな町オタリー・セント・メアリーは、世界的に有名なタールバレル祭りで炎と興奮に包まれます。一夜限り、地元の人々が燃え盛るタール樽を肩に担ぎ、混雑した路地や広場を駆け抜けるこの伝統行事には、何千人もの観客が集まり、町中が熱気と歓声で満ちあふれます。スリルと歴史、そして唯一無二の体験を求める人にとって、この祭りは忘れられない夜となるでしょう。

火がともる最初の瞬間から深夜の残り火まで、祭りは五感を刺激します。燃えるタールの匂い、顔に感じる炎の熱、樽のはぜる音や群衆の歓声、夜空に舞う火花―まさに“生きたイングランド民俗”を肌で感じる祝祭です。

燃え盛るタールバレル：心臓が高鳴る伝統

大焚火、祭りの高揚感

衣装と装飾

オタリー・セント・メアリーのタールバレル祭りの起源ははっきりしていませんが、少なくとも17世紀には行われていたとされ、イングランド南西部でも最も古くから続く火祭りのひとつです。最も有力な説では、悪霊払い・空気の浄化・家屋の燻蒸といった目的で始まったとされ、町の人々はタールを詰めた樽に火をつけて担ぎ、火の力で邪気を払ったと伝えられています。^[1][2] また、1605年の火薬陰謀事件（ガイ・フォークス事件）やスペイン無敵艦隊への警告に由来するという説もあり、イングランド西部では昔から11月5日にたいまつ行列や燃える樽を転がす習慣がありました。もともとは樽を転がしていたものが、やがて担ぐスタイルへと進化し、今ではイギリスで唯一、フルサイズの燃えるタール樽を肩に担いで町中を駆け抜ける伝統が残る町となっています。

祭り当日は、町の中心にあるパブごとに用意された樽が数週間前からタール漬けにされ、11月5日の夜に順番に火がつけられます。小さな子どもや女性用の樽から始まり、夜遅くには30kgにもなる大樽を担ぐ大人の番へと続きます。バレルローラー（担ぎ手）は代々地元に住む家系が多く、家族の誇りとして何世代にもわたり名誉を競います。町の人口を大きく上回る1万人以上の観客が集まり、町中が炎と歓声に包まれます。

この祭りは、単なる奇抜な伝統や観光イベントではなく、オタリーの人々にとっては歴史と誇り、そしてしなやかな強さ（レジリエンス）の象徴です。現代では安全対策も強化されていますが、バレルを担ぐ勇気や町を挙げての一体感、そして過去から今へと受け継がれる「生きた文化遺産」として、地域の精神と結束を今に伝えています。炎に包まれたタールバレルが夜の路地を駆け抜ける光景は、地元の人々と訪問者の心に深く刻まれ、オタリー・セント・メアリーのアイデンティティそのものとなっています。

最前列で見ていたら、バレルローラーが通り過ぎる時の炎の熱気がすごかった。怖さと興奮が入り混じって、まさに生きた歴史を目撃している感覚。群衆のエネルギーも圧巻でした。

• 毎年少なくとも17個の樽が燃やされ担がれ、最大で30kgにもなります。
• バレルローラーはオタリー生まれが条件で、家族代々で参加する家も多いです。
• 安全のため、ローラーはウールやコットン、麻など天然素材のみ着用（化繊は禁止）。
• 開催は毎年11月5日（5日が日曜の場合は4日）、ボンファイヤーナイトと同日です。

オタリー・セント・メアリー・タールバレル祭りは毎年11月5日（5日が日曜の場合は4日）にデヴォン州オタリー・セント・メアリーで開催されます。参加無料ですが、町は非常に混雑するのでご注意を。炎と伝統、そしてコミュニティの熱気を体感できる一夜です。