ブン・バンファイ（ロケット祭り）

毎年5月、タイ東北部イサーン地方の町々は「ブンバンファイ（ロケット祭り）」の熱気と轟音で一変します。特にヤソートーンを中心に、3日間にわたり手作りロケットが空高く打ち上げられ、泥んこダンスや夜通しの宴が繰り広げられます。農民も家族もお祭り好きも、みんなが豊作と雨を願い、忘れられない“天まで届け”の祈りを捧げるこの祭りに集います。

空に轟くロケットの迫力、パレードや伝統舞踊の熱気、イサーン屋台の香ばしいグルメ…。地元の人々が本気で楽しみ、伝統を受け継ぐこの祭りは、観光地化されたイベントでは味わえない“タイの本当の暮らしや文化”を肌で感じたい人にこそおすすめです。

天空へ！轟音と祈りのロケットバトル

笑いと艶やかさが渦巻くカラフルパレード＆ダンス

イサーンの旨み炸裂、屋台グルメと地酒の宴

ブンバンファイの起源は、仏教が伝わる以前のイサーン地方に根付いた豊穣と雨乞いの祭祀にさかのぼります。古代から村人たちは、田植え前のこの時期に雨の神「パヤー・テーン」へ祈りを捧げ、手作りのロケットを空高く打ち上げて、稲作に欠かせない恵みの雨を呼び込もうとしてきました。ロケットの煙が天に届けば、神々がその願いを受け取り、やがて大地に雨をもたらすと信じられてきたのです。

やがて仏教が地域に広まると、ブンバンファイは功徳積み（タンブン）や寺院への寄進、僧侶への食事供養などの仏教儀礼と融合していきます。また、イサーン地方に伝わる「ヒキガエル王」や「ナーガ（大蛇）」の民話も祭りの中に取り込まれ、ロケットの轟音や打ち上げの失敗を笑い飛ばすユーモアや、村ごとの競争心が加わって、独自の祝祭文化が形成されました。

現在のブンバンファイは、単なる雨乞い行事を超え、村や家族、友人同士の絆を深める再生と共同体の祭りとして定着しています。農民にとって雨は命そのもの。ロケットの打ち上げは、豊作への切実な願いであると同時に、村人たちが一年の苦労を分かち合い、未来への希望を空に託す象徴的な儀式です。祭りでは、功徳を積み、祖先や自然への感謝を表しながら、泥んこになって笑い合い、地元の伝統音楽や踊りで盛り上がることで、イサーン文化のたくましさと創造力、そして“人生は楽しむもの”というメッセージを神様にも伝えています。

雨でも晴れでも全力で祝うこの祭りは、自然とともに生きるイサーンの人々の知恵と誇り、そして世代を超えて受け継がれる地域のアイデンティティを体現しています。ブンバンファイは、農村の暮らしと信仰、そして人と人とのつながりを祝福する、まさに“生きた文化遺産”といえるでしょう。

ロケット目当てで来たけど、一番心に残ったのは地域の一体感。パレードで踊りの輪に入れてもらい、カーンの吹き方を教わり、初めて見る料理もたくさん味わいました。泥んこ、音楽、花火…全部が自由で解放感にあふれていて、新しい友達もでき、タイ文化の奥深さに感動しました。

• 大型ロケットは高さ1,000メートル以上、火薬120kgを超えるものも。
• 泥んこレスリングは勝者も敗者も泥だらけになる名物イベント。
• ヤソートーンのブンバンファイには毎年5万人以上が集まり、「タイ一うるさい祭り」とも。
• ロケットは「飛距離」「美しさ」「山車の出来」などで表彰されます。

会場は主にヤソートーン県（およびイサーン各地）。メインイベントはヤソートーン市内のパヤー・テーン公園や目抜き通りで開催されます。