エル・コラチョ

スペインの村で繰り広げられる“無垢を飛び越える祝福”


2025/06/21

毎年6月、スペイン北部の小さな村カストリーヨ・デ・ムルシアは、世界でも類を見ない奇祭「エル・コラチョ(赤ちゃんジャンプ祭り)」の舞台となります。コルプス・クリスティ(聖体祭)の時期に行われるこの伝統行事では、悪魔役に扮した男性たちが、通りに並べられた赤ちゃんたちの上をジャンプして飛び越えます。地元の家族や村人はもちろん、世界中から集まる好奇心旺盛な旅行者も、この不思議で神聖、そしてどこかユーモラスな祝祭に魅了されます。

エル・コラチョは村人だけのものではなく、誰でも参加・見学できるオープンな伝統行事。神聖さと現実が入り混じる、スペインらしい“生きた民俗”を体感できる貴重な機会です。

主な見どころ

悪魔のジャンプ

祭りのクライマックスは「サルト・デル・コラチョ(悪魔のジャンプ)」。日曜の午後、数日間の行列や前夜祭を経て、黄色と赤の派手な衣装に身を包み、仮面をかぶった悪魔役(エル・コラチョ)がカスタネットを鳴らしながら通りを駆け抜けます。村人たちが見守る中、1歳未満の赤ちゃんたちが白い洗礼服でマットレスの上に寝かされ、悪魔が一気に飛び越える瞬間、緊張と期待で空気が張りつめます。

主なイベント

祭りは三位一体後の水曜から始まり、聖体兄弟団による行列や、悪魔役による村中の練り歩き、鞭を鳴らして村人をからかう伝統などが続きます。最終日には花や白いシーツで飾られた通りをパレードし、祭壇にはワインやパンが供えられ、香が漂います。ジャンプの後は神父による赤ちゃんの祝福、少女たちによるバラの花びらのシャワーで儀式が締めくくられます。

衣装と装飾

エル・コラチョの衣装は黄色い仮面と赤・黄のスーツ、腰には大きなカスタネット。相棒のアタバレロ(太鼓役)は黒いコートにシルクハット、太鼓のリズムでジャンプのタイミングを盛り上げます。村中は花や白い布、カラフルな枕やバナーで彩られ、祭壇にはワインや水が供えられ、太鼓やカスタネットの音が響き渡ります。

文化・歴史的背景

エル・コラチョ(El Colacho)の起源は17世紀初頭、スペイン北部カストリーヨ・デ・ムルシア村で始まったとされています。最古の記録は1620年に遡り、当時ヨーロッパ各地で流行していた“悪魔祓い”や“浄化の儀式”と、カトリックの聖体祭(コルプス・クリスティ)が融合したものと考えられています。村の聖体兄弟団(Cofradía del Santísimo Sacramento de Minerva)が中心となり、毎年コルプス・クリスティの後の日曜日に開催されてきました。

儀式の主役である「エル・コラチョ」は、黄色と赤の衣装と仮面をまとった“悪魔役”で、村の通りに敷かれたマットレスの上に横たわるその年生まれの赤ちゃんたちの上をジャンプします。この行為は、悪魔が赤ちゃんの“原罪”や災厄、病気を吸い取り、無垢な命を守るという意味を持ちます。ジャンプの後には神父による祝福と、花びらのシャワーが赤ちゃんに降り注ぎ、村全体で子どもの健やかな成長を祈願します。

この祭りは、時に教会当局から“迷信的”と批判されることもありましたが、村人たちは「家族と地域の絆」「世代を超えて受け継がれる通過儀礼」として大切に守ってきました。現在も聖体兄弟団が運営し、スペインでも最もユニークな“生きた伝統”として、村の誇りとアイデンティティを象徴する存在です。

参加者の声

イギリスから見物に来ました。衣装やジャンプ前の緊張感、村全体が息をのむ瞬間が忘れられません。地元のお父さんに“怖いけど絶対に外せない行事”だと聞きました!

豆知識

  • この祭りは1620年代からほぼ毎年開催されており、400年以上の歴史があります。
  • 見た目のインパクトに反し、ジャンプで事故が起きた記録はなく、悪魔役は兄弟団の中から訓練を経て選ばれます。
  • 赤ちゃんは白い洗礼服で寝かされ、ジャンプ後はバラの花びらを浴びて祝福されます。

開催日程

エル・コラチョ(El Colacho)は毎年6月、カストリーヨ・デ・ムルシアで開催。

開催日程は変更になる場合があります。最新の情報は公式サイトなどをご確認ください。

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実際の様子

Tokyo

photo by Nick Gammon


開催情報

名称 エル・コラチョ
スペイン
エリア ブルゴス, カトリージョ・デ・ムルシア
開催時期 2025/06/21
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