ブラック・ナザレの行列
マニラを埋め尽くす裸足の祈りと信仰の大海
2026/01/08
毎年1月9日、マニラの街は「ブラック・ナザレ行列」で信仰の大河となります。世界最大級の宗教行事のひとつで、何百万人もの信者たちが、十字架を背負ったキリスト像「ブラック・ナザレ」を市内に運ぶため、裸足で24時間近くも行進します。奇跡や癒し、願いの成就を求めて、老若男女が熱気と祈りに包まれたこの行列に参加します。巡礼者も観光客も、フィリピン・カトリックの“生きた信仰”を五感で体験できる圧倒的な瞬間です。
行列は毎年1月9日、キリノ・グランドスタンドを出発し、キアポ教会まで続きます。敬虔なカトリック信者はもちろん、家族連れや病を抱える人、感謝の思いを持つ人など、さまざまな人々がそれぞれの祈りを胸に参加します。
主な見どころ
トランスラシオン(大行列)
祭りの中心は「トランスラシオン」と呼ばれる大行列。約6.5キロの道のりを、裸足の信者たちがマルーンと黄色の服をまとい、ブラック・ナザレ像を乗せた山車(アンダス)を押し引きしながら進みます。像に触れたり、ハンカチやタオルを投げて像に触れさせてもらうことで、ご加護や癒しを願う人が絶えません。「ビバ・セニョール・ナザレノ!」の掛け声や祈りの歌が響き、熱気と汗、感動が渦巻きます。
主なイベント
行列は夜明け前のミサから始まり、その後キリノ・グランドスタンドを出発。多くの参加者が裸足で、涙を流したり、歌いながら祈ったり、声を張り上げたりしながら何時間も練り歩きます。サン・セバスチャン教会前でブラック・ナザレ像と聖母マリア像が対面する「ドゥンガウ」の瞬間は特に感動的。徹夜の祈りや複数回のミサ、キアポ教会での最終セレモニーも行われます。
衣装と装飾
多くの信者はブラック・ナザレの象徴色であるマルーンと黄色のシャツを着用し、像のプリントやロゴが入ったものも多いです。白いハンカチやタオルを持ち、像に触れさせてご利益を願う人も。山車(アンダス)は花やロウソクで飾られ、沿道にはバナーやストリーマーが並びます。お香や汗の匂い、屋台の食べ物の香りが混ざり合い、熱気とともに立ち込めます。
文化・歴史的背景
ブラック・ナザレ像の歴史は1606年、スペインの宣教師がメキシコからフィリピンに運んだことに始まります。この像は等身大の木製キリスト像で、輸送中に船が火災に遭い、黒く焦げたことから「ブラック・ナザレ」と呼ばれるようになりました。一説には、もともと黒く塗られていたという説もありますが、火事と奇跡的な生還の物語が信仰の対象となっています。
ブラック・ナザレ像は、当初ルネタやイントラムロスに安置されていましたが、18世紀にキアポ教会へと移されました。この像の「移動(トランスラシオン)」を記念して、毎年1月9日に大規模な行列が行われるようになりました。1767年にキアポ教会へ運ばれた際、多くの信者が像の後を歩いたことが、現在の行列の起源とされています。
ブラック・ナザレ像は、火災や地震、戦争など数々の災難を乗り越え、400年以上にわたり奇跡や癒しの象徴として多くのフィリピン人カトリック信者の信仰を集めてきました。像に触れることで病気が治る、願いが叶うと信じられ、行列には全国から何百万人もの信者が集まります。裸足で行進するのは、キリストの受難と謙虚さを模倣するためです。
この行列は単なる伝統行事ではなく、信者一人ひとりの感謝や願い、贖罪のための個人的な巡礼であり、フィリピン最大級・世界有数の宗教イベントとして今も続いています。
参加者の声
写真家として取材に来たつもりが、何百万人もの信者に囲まれ、歌や涙に心を動かされました。病気の子のために全行程を歩いた女性と話し、その信仰心に深く感動しました。
豆知識
- ブラック・ナザレ像は400年以上の歴史を持ち、火災・地震・洪水・爆撃など数々の災難を乗り越えてきた。
- 信者が裸足で歩くのは、キリストの受難を模し、謙虚さを表すため。
- 像に触れたハンカチやタオルは、ご利益や癒しをもたらすと信じられている。
開催日程
ブラック・ナザレ行列(トランスラシオン)は毎年1月9日、マニラのキリノ・グランドスタンドからキアポ教会まで行われます。
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