イミルシルの婚約ムッセム

山に響く恋と選択、ベルベルの誇りを祝う祭り


2026/09/17 - 2026/09/19

毎年9月、モロッコのアトラス山脈奥地にあるイミルシル村は、「イミルシル婚約ムッセム(婚約祭)」の舞台となり、恋と伝統、部族の絆が交錯する特別な3日間を迎えます。数千人のベルベル人や旅人が集まり、集団結婚式や求婚の儀式、太鼓と踊り、山の恵みのごちそうを楽しみます。女性が自ら相手を選ぶことができるという、伝説と現代が交わるこの祭りは、モロッコの素顔と温かさを体感したい人にぴったりの体験です。

テントと家畜が並ぶ高原、手織りのショールが揺れる色彩、ラムタジンやミントティーの香り、そしてアヒドゥスの太鼓が山々に響く音…。イミルシル婚約祭は、伝説・ロマンス・ベルベルのもてなしが五感を満たす、まさに“生きた民話”の世界です。

主な見どころ

集団結婚式

祭りの中心は集団結婚式。何十組ものカップルが家族や村人に見守られながら誓いを交わします。女性はスパンコールの手織りショール「ハンディラ」や銀の装身具で華やかに、男性は白いジェラバで正装。女性が自分の意思で相手を選ぶという、伝説が息づく誇り高い儀式です。

求婚の儀式とマッチメイキング

結婚式の前には、若者たちの求愛の儀式が広場で繰り広げられます。男性が視線やうなずきで思いを伝え、女性がそれに応じて手をつなげば成立。家族や友人が仲立ちし、ベルベル語で「あなたは私の肝臓をつかまえた(=愛している)」という独特な愛の表現も。

音楽・踊り・部族の集い

祭り期間中はアヒドゥス(輪踊り)や太鼓、ベルベルの歌が夜空に響きます。遠方から集まった部族がそれぞれの音楽や家畜、工芸品を持ち寄り、笑い声やラクダの鈴の音が絶えません。

衣装と装飾

女性はハンディラや銀細工、ヘナタトゥー、コールで目元を彩り、男性はジェラバやターバンで正装。テントは織物やカラフルな布、銀飾りで飾られ、山のバザールが華やかに広がります。

文化・歴史的背景

イミルシル婚約祭の歴史は、アトラス山脈のベルベル人社会に深く根ざしています。その起源は、イスリ族とティスリト族という敵対する二つの部族の若い恋人たち「イスリ」と「ティスリト」の悲恋伝説にさかのぼります。二人は部族の対立によって結婚を許されず、悲しみのあまり命を落とし、その涙が現在のイスリ湖とティスリト湖になったと語り継がれています。

この悲劇をきっかけに、両部族は若者たちが年に一度だけ自由に相手を選び、親の許可なしに結婚できる特別な日を設けることで和解しました。こうして湖のほとりで始まったのが、イミルシル婚約祭の原型です。

祭りはもともと部族間の和解と若者の自由な愛を祝う宗教的・社会的な意味合いを持っていましたが、次第に山岳地域の大規模な市場(スーク)や収穫祭、部族の交流の場としても発展。家畜や工芸品の取引、収穫の祝い、親戚同士の再会など、地域社会の絆を深める総合的なイベントとなりました。

現代では、イミルシル婚約祭はベルベル文化の誇りと“自分で相手を選ぶ愛”の象徴として、また伝統衣装や音楽、食文化を体験できる観光資源としても注目されています。毎年3万人規模の人々が集い、伝説と現代が交錯する“生きた民話”の祭りとして、国内外の人々を魅了し続けています。

参加者の声

イスリとティスリトの伝説を知っていたけど、実際に祭りを体験したら本当に魔法のようでした。音楽や色彩、みんなの一体感が忘れられません。

豆知識

  • 「あなたは私の肝臓をつかまえた」はベルベル語の愛の表現。
  • 離婚や未亡人の女性も再婚でき、先のとがった帽子で見分けることができる。
  • 会場は伝説の恋人にちなんだイスリ湖・ティスリト湖周辺で交互に開かれる。

開催日程

イミルシル婚約ムッセムは毎年9月、モロッコ・イミルシル村周辺で開催。アトラスの山旅とともに、伝説と音楽、ベルベルの心をぜひ体感してください。

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実際の様子

Tokyo

photo by Marie Aude


開催情報

名称 イミルシルの婚約ムッセム
モロッコ
エリア イミルシル
開催時期 2026/09/17 - 2026/09/19
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