スコッピオ・デル・カッロ

フィレンツェの爆発的な復活祭の見世物

毎年復活祭の日曜日、フィレンツェのドゥオーモ広場は独特の祝祭「スコッピオ・デル・カッロ」で活気に満ちあふれます。午前10時、花で飾られた白い牛に引かれた高さ9メートルの古代の山車が、ポルタ・アル・プラートからゆっくりと広場へ向かいます。150人もの兵士、音楽家、15世紀の衣装を着た市民が山車に付き添い、太鼓の音と旗手の華麗な演技が街を彩ります。11時、復活祭ミサの最中にジョットの鐘楼から鐘が鳴り響くと、大聖堂の祭壇から機械仕掛けの鳩が発射され、山車に激突。すると、20分間にわたる壮大な花火のショーが始まり、4万人を超える観客が歓声を上げます。350年以上続くこの伝統は、フィレンツェの豊かな収穫と繁栄を願う、宗教と民間信仰が融合した独特の祭典なのです。

主な見どころ

ブリンデッローネ:爆発する山車

スコッピオ・デル・カッロの中心となるのは、500年以上も使われ続けている高さ9メートルの古い山車、ブリンデッローネです。夜明けとともに、春の花や香草の花輪で飾られたこの華やかな木造の塔が、ポルタ・アル・プラートからドゥオーモ広場への旅を始めます。朝日に輝く白い毛並みの牛が、ゆっくりとフィレンツェの狭い街路を進むにつれ、干し草の土の香りと花々の甘い香りが空気を満たします。

ブリンデッローネに付き添うのは、鮮やかな15世紀の衣装を身にまとった150人の音楽家、兵士、市民たちの行列です。太鼓とトランペットの音が古い石壁に反響し、絹やビロードの衣装のさらさらという音が感覚的な風景に彩りを添えます。この色鮮やかな行列は、フィレンツェの豊かなルネサンス時代の歴史を垣間見せ、参加者一人一人がこの街の過去の一部を体現しています。

コロンビーナ:鳩の炎の飛行

山車がドゥオーモ広場に到着すると、全ての目が大聖堂に向けられます。中では、香の香りとろうそくの光の中、フィレンツェ大司教がお祭りの最も重要な要素、コロンビーナに火をつける準備をします。聖霊の象徴であるこの機械仕掛けの鳩は、高祭壇から外の山車まで伸びるワイヤーに止まっています。

復活祭ミサの最高潮、グローリアの時に、大司教は第一回十字軍から持ち帰られた古い火打石から灯した聖なる火でコロンビーナに点火します。シューッという音とともに、鳩はワイヤーに沿って走り、後ろに火花の軌跡を残します。群衆は息を呑んで鳩が山車に近づくのを見守ります。無事に点火されれば、その年が豊かな年になるという言い伝えがあるからです。

爆発:火の交響曲

コロンビーナがブリンデッローネに到達した瞬間、広場は光と音の轟音に包まれます。慎重に振り付けられた花火が次々と打ち上がり、金色、赤色、緑色の光の滝が空を彩ります。火薬の刺激的な匂いが、近くの屋台から漂う甘い焼き栗の香りと混ざり合い、独特の嗅覚体験を生み出します。

20分間、ドゥオーモ広場は火と煙の劇場と化し、一発一発の爆発に集まった群衆から歓声と拍手が上がります。花火の振動は石畳を通して感じられ、観客たちをこのイベントの生々しいエネルギーと結びつけます。

復活祭の饗宴:伝統の味

煙が晴れ、興奮が落ち着くと、フィレンツェのカフェやレストランは活気に満ちあふれます。伝統的な復活祭料理が主役となり、ローストラムや焼きたてのコロンバ(鳩型の復活祭ケーキ)の香りが漂います。クロスティーニ・ディ・フェガティーニ(鶏レバーのパテをのせたトースト)やパッパ・アル・ポモドーロ(パンとトマトのスープ)といった郷土料理が、トスカーナ料理の味を堪能させてくれます。

街路では、スキャッチャータ・アッラ・フィオレンティーナという、オレンジ風味の柔らかいケーキに粉砂糖をまぶした伝統的な復活祭のお菓子を売る屋台が並びます。この日の祝祭は、家族や友人が集まって長く楽しい食事をし、地元のキャンティワインで乾杯しながら幸運を祈って締めくくられることが多いです。

文化的・歴史的背景

スコッピオ・デル・カッロは、フィレンツェの宗教的熱意と芸術的創造性が融合した、500年以上の歴史を持つ伝統行事です。その起源は1097年の第一回十字軍にさかのぼります。伝説によると、フィレンツェの貴族パッツィーノ・デ・パッツィがエルサレム攻略の際に活躍し、その勇気への報酬として聖墳墓教会から3つの火打石を授かりました。これらの火打石は現在もフィレンツェのサンティ・アポストリ教会に大切に保管され、毎年の祭りで使用される「聖なる火」の源となっています。

当初は若者たちが松明を持って街中に聖なる火を運ぶ簡素な儀式でしたが、時代とともに華やかな祭典へと進化しました。15世紀末には、現在のブリンデッローネと呼ばれる巨大な山車が登場。この9メートルの塔は、フィレンツェの繁栄と技術力を象徴する芸術作品として、毎年市民の手で丁寧に装飾されます。16世紀初頭には、メディチ家出身の教皇レオ10世の発案により、コロンビーナ(機械仕掛けの鳩)が加わりました。これは聖霊を表すと同時に、フィレンツェの革新的精神を体現しています。

スコッピオ・デル・カッロは、フィレンツェの人々にとって深い文化的意義を持つ行事です。パッツィ家の紋章を掲げた山車は、市民の誇りと歴史的アイデンティティの象徴です。また、この祭りは宗教と民間信仰が融合した独特の文化現象でもあります。コロンビーナの飛行と花火の成功は、豊作と繁栄の前兆とされ、特に周辺の農民たちにとっては重要な意味を持ちます。さらに、15世紀の衣装を着た150人の行列参加者や、旗手たちの華麗な演技は、フィレンツェのルネサンス文化の継承を体現しています。この祭りは、フィレンツェの人々が過去と現在、そして未来をつなぐ生きた文化遺産として大切に守り続けているのです。

参加者の声

アメリカから来た私は、復活祭の時期にフィレンツェを訪れていたのですが、思いがけずスコッピオ・デル・カッロに出くわしたんです。ドゥオーモ広場は、まるで空気が震えているかのような熱気に包まれていました。隣に立っていた地元の老夫婦が、きっと私の困惑した顔を見てくれたんでしょう。儀式の一つ一つの意味を、まるで孫に語り聞かせるように丁寧に教えてくれました。昔のお祭りの思い出話や、長い年月でこの行事がどう変わってきたかなんかも聞かせてもらって。そうこうしているうちに、例の鳩型ロケットが飛び立つ時間に。その瞬間、私はもう単なる観光客じゃなくて、この特別な出来事の一部になれた気がしたんです。花火の爆発はもちろんすごかったんですが、それ以上に心に残ったのは、この街の人たちの絆と、脈々と受け継がれてきた伝統の重みでした。きっと一生忘れられない体験になりそうです。

面白い事実

  • ブリンデッローネの山車は500年以上前のもので、高さ9メートルあります。非常に大きいため、年間を通して保管される専用の車庫がヴィア・イル・プラートにあります。
  • 聖なる火を灯すために使用されるエルサレムからの3つの火打石は、現在もフィレンツェのサンティ・アポストリ教会に保管されています。
  • コロンビーナが山車に火をつけられなかったり、祭壇に無事に戻れなかったりした場合、その年の凶兆とされます。
  • 山車を引く牛は、このイベントのために特別に飼育され、トスカーナの田舎で集められた花や香草で飾られます。
  • 1097年、パッツィーノ・デ・パッツィがエルサレムから3つの火打石を持ち帰ったことから始まったこの伝統では、当初は若者たちが松明を持って「聖なる火」を街中に運んでいました。

祭りの日程

スコッピオ・デル・カッロは、毎年復活祭の日曜日にイタリアのフィレンツェで行われます。

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実際の様子

Tokyo

photo by Skaja Lee

Tokyo

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開催情報

名称 スコッピオ・デル・カッロ
イタリア
エリア , フィレンツェ
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