アポクリエス

色彩と風刺、春の喜びを謳うギリシャのカーニバル


2026/02/07 - 2026/02/28

ギリシャ正教の信者にとって、肉食や飲酒、娯楽などを慎む「四旬節(レント)」に入る直前の3週間は、アポクリエスと呼ばれるカーニバルの期間となります。この時期、人々は冬の終わりを告げるように、踊りや仮装行列、パレード、街中のパーティーなどを思いきり楽しみます。
毎年冬の終わりから四旬節にかけて、ギリシャはこのアポクリエスで国中が賑わい、古代の伝統と現代の創造性が融合した色鮮やかな祭りが繰り広げられます。

舞い散る紙吹雪、太鼓やブズーキのリズム、はちみつをたっぷりかけたルクマデス(揚げドーナツ)や熱々のスブラキの味わい、ベルベットの衣装の肌触り、そしてコミュニティの温かさ。アポクリエスは五感を刺激し、冬の憂鬱を吹き飛ばす希望の祭りです。

主な見どころ

パレード、街の祝祭、カーニバルキングの焼却

アポクリエスの見どころは、特にパトラスの大規模なパレード。3万人以上の仮装参加者と数十台の山車が街を埋め尽くし、30万人以上の観客が熱狂します。仮面や風刺、音楽が入り混じるカラフルな行列は、カーニバルキングの象徴的な焼却でクライマックスを迎えます。アテネやテッサロニキ、地方の村々でも、音楽や踊り、即興劇が街中に溢れ、子どもたちのパレードや宝探し、仮装舞踏会が数週間続きます。

特に「ツィクノペンプティ(煙の木曜日)」は、国中で肉を焼く日として知られ、街や村はバーベキューの香りに包まれます。ガラクシディでは「小麦粉合戦」、ティルナヴォスでは古代の豊穣祭に由来する「ファルス祭」がユニークな彩りを添えています。

仮面、衣装、装飾

アポクリエスは視覚的にも華やかで、羽根飾りやスパンコールの衣装、ベネチアンマスクやポップカルチャーを取り入れた仮装が街を彩ります。多くの衣装は手作りで、古代ギリシャやベネチアの伝統、現代の流行が融合。家々や広場はカラフルな旗やリボンで飾られ、紙吹雪の音や子どもたちの笑い声が響き渡ります。

伝統料理と飲み物

食もアポクリエスの重要な要素。ツィクノペンプティにはスブラキ、ラムチョップ、ソーセージ、ココレツィ(内臓の串焼き)が香ばしく焼かれます。メゼ(小皿料理)、サラダ、パイも並び、ルクマデスやディプレス(揚げ菓子)、セモリナのハルヴァなどの甘味も人気。地元のワインやウーゾ、ラキがふんだんに振る舞われ、炭火やスパイスの香りが冬の冷気を和らげます。

文化・歴史的背景

アポクリエスの歴史は、古代ギリシャのディオニュソス祭にまでさかのぼります。ディオニュソスは酒と豊穣、歓喜の神として知られ、その祭りでは仮面をつけた行列や歌・踊り、演劇、そして大胆な風刺や騒乱が繰り広げられました。これらの祭儀は、冬の終わりと春の訪れ、自然の再生を祝うものであり、人々が日常の枠を外して自由に振る舞う“カタルシス”の場でもありました。やがて、こうした異教の祝祭がキリスト教の四旬節前の祭りと融合し、仮面や仮装、パレード、風刺劇、ごちそうといった要素を残しながら、現代のアポクリエスへと発展していきました。

「アポクリエス」という言葉自体は「肉を断つ」という意味で、イースター前の断食(四旬節)に入る直前、肉やお酒、娯楽を存分に楽しむ“最後の大騒ぎ”を表します。ギリシャ正教の信者にとっては宗教的な区切りであると同時に、家族や地域、友人たちと共に生命の喜びや再生、春の到来を祝う大切な行事です。社会の枠組みや階級、権力関係が一時的に逆転し、仮面や風刺、ユーモアを通じて日常の抑圧や不満を解放する「社会の安全弁」としての役割も果たしてきました。

アポクリエスの象徴的な儀式である仮面や仮装、山車、燃やす人形(カーニバルキング)などは、冬の暗闇から春の光への移行、死から再生への循環を表現しています。こうした祭りを通じて、ギリシャの人々は古代から続く生命のリズムや共同体の絆、そして困難な時代にも希望や創造性を失わない精神を受け継いできました。現代でもアポクリエスは、世代や地域を超えて人々をつなぎ、ギリシャらしい自由で陽気な文化の象徴として、国内外の多くの人々に愛されています。

参加者の声

アテネのアポクリエスを見に来ました。知らない人と一緒に踊り、焼きたてのスブラキを食べ、夜遅くまで笑い続けました。子どもたちは宝探しや紙吹雪が大好きでした!

豆知識

  • ツィクノペンプティ(煙の木曜日)は、断食前の木曜日に肉を焼く習慣から名付けられました。
  • ガラクシディの「小麦粉合戦」は何世紀も続く伝統で、参加者同士で色粉を投げ合います。
  • 「カーニバル」という言葉はラテン語の「carne vale(肉よ、さようなら)」に由来し、ギリシャ語の「アポクリエス」と同じ意味を持ちます。

開催日程

アポクリエスはギリシャ全土で、清浄月曜日(四旬節の始まり)までの約3週間にわたり祝われます。主なイベントはパトラス、アテネ、テッサロニキなどで開催され、年によって日程が異なります。詳細は各地のカレンダーをご確認ください。

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実際の様子


開催情報

名称 アポクリエス
ギリシャ
エリア ガラヒディ
開催時期 2026/02/07 - 2026/02/28
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