シニスカ・アルカ(シニの騎士トーナメント)

騎士の誇りと絆が駆け抜けるクロアチアの伝統競技祭


2026/08/01

毎年8月、クロアチア・シニ(Sinj)の町は「シニャ・アルカ」の熱気に包まれます。300年以上続く騎馬槍試合で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されたこの祭りは、地元の誇りと勇気、家族の絆を体感できる夏の一大イベント。観客も地元民も、甲冑に身を包んだ騎士たちが馬で疾走し、わずか5.6cmの鉄の輪(アルカ)を槍で射抜く瞬間に息を呑みます。歴史好きも、スペクタクル好きも、ダルマチアの本物の伝統に触れたい人にもおすすめの“生きた伝説”です。

銀色のヘルメットや刺繍入りのサッシュがきらめき、馬の蹄のリズム、1万人を超える観客の歓声、近くの酒場から漂うローストラムやハーブの香り…。シニの夏は、伝統が“今”としてよみがえる特別な時間です。

主な見どころ

アルカ本戦

祭りの中心は、8月第1日曜に開催されるアルカ本戦。18世紀スタイルの軍服をまとった「アルカリ(騎士)」たちが馬で全速力で駆け抜け、長い槍で宙に吊るされた直径わずか5.6cmの鉄輪を狙います。槍が刺さった場所によって得点が決まり、最も高得点を挙げた騎士がその年のチャンピオンに。緊張感と技、華やかなパレード、そしてシニのブラスバンドの音色が会場を包みます。

パレードと儀式、セレモニー

大会前日から町中でパレードや儀式が続きます。アルカリや従者たちが豪華な衣装で行進し、旗手や太鼓隊、民族衣装の市民も加わります。騎士の祝福、アルカの規則朗読、優勝者へのサッシュ授与など、伝統と感動が凝縮されたセレモニーも見どころです。

衣装とデコレーション

参加者の衣装は必見。金糸刺繍のベルベットジャケット、白いズボン、赤いサッシュ、馬の尾毛をあしらった銀のヘルメットなど、18世紀の華やかさそのまま。町じゅうがバナーや花、シニの赤と白で彩られ、観客も民族衣装や旗を身につけて祭りを盛り上げます。

文化・歴史的背景

シニャ・アルカの起源は1715年、クロアチアのセティナ渓谷にある小さな町シニが、オスマン帝国の大軍による包囲戦に直面したことにさかのぼります。圧倒的に不利な状況にもかかわらず、町の住民や守備隊は数日間にわたる激しい戦いの末、オスマン軍を撃退することに成功しました。地元の伝説では、聖母マリアの加護によってこの勝利がもたらされたとされ、シニの人々にとって誇りと団結の象徴的な出来事となりました。

この勝利の勇気と連帯を称え、翌1716年から毎年「アルカ」と呼ばれる騎馬槍試合が開催されるようになりました。このイベントは、中世の騎士道精神や地元の伝承、カトリック信仰が融合したもので、以降、戦争や占領、時代の変化を経ても絶えることなく続いてきました。アルカは今や地域アイデンティティと誇り、そしてレジリエンス(困難に打ち勝つ力)の象徴です。

シニの人々にとってアルカは単なる祭りではありません。祖先とのつながりであり、若者たちの通過儀礼であり、家族や地域社会の誇りそのものです。多くのアルカリ(騎士)は何世代にもわたりこの伝統を受け継いでおり、息子が父や祖父の跡を継いで参加することも珍しくありません。夏になると町全体が準備や儀式に関わり、地域が一体となって盛り上がります。

こうした歴史的・文化的意義が評価され、シニャ・アルカは2010年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。現在ではクロアチアを代表する伝統行事のひとつとして、300年以上にわたりシニの「団結・勇気・継承」の精神を体現し続けています。

参加者の声

観光客として初めて見ましたが、馬の蹄の音や衣装のきらめき、観客の熱気に圧倒されました。地元の方がルールや由来を丁寧に教えてくれて、“生きた歴史”を体感できました。

豆知識

  • アルカ(鉄輪)は直径わずか5.6cm。中央を射抜くのはまさに職人技!
  • アルカリ(騎士)になれるのはシニとその周辺出身の男性のみ。

開催日程

シニャ・アルカは毎年8月第1日曜、クロアチア・シニで開催。パレードや伝統料理も楽しみつつ、“騎士の誇り”と熱気に包まれる夏を体験してみてください。

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実際の様子


開催情報

名称 シニスカ・アルカ(シニの騎士トーナメント)
クロアチア
エリア シニ
開催時期 2026/08/01
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