龍船節（岳陽国際ドラゴンボートフェスティバル）

6月初旬、洞庭湖の輝く水面に夏の陽光が反射する中、古都岳陽の湖畔は活気に満ちています。毎年旧暦5月5日を中心に開催される岳陽国際ドラゴンボートフェスティバルでは、龍の頭を模した華やかな船首を持つ20メートル以上の細長いボートが、湖面を疾走します。太鼓手の力強いリズムに合わせ、20人の漕ぎ手が一糸乱れぬ動きで櫂を操る様子は圧巻です。湖岸には10万人を超える観客が詰めかけ、色とりどりの民族衣装に身を包んだ地元の人々や、カメラを手にした外国人観光客の歓声が響き渡ります。3日間の祭典では、伝統的な龍舟競漕に加え、現代的なスプリントレースも行われ、古代中国の文化と現代のスポーツ精神が融合した独特の雰囲気を醸し出しています。湖畔に立ち並ぶ屋台からは、粽（ちまき）や臭豆腐の香りが漂い、祭りの興奮をさらに高めています。

壮大なドラゴンボートレース

開会式の壮観

粽（ちまき）作り

ドラゴンボート製作技術展示

ドラゴンボートフェスティバルの起源は2000年以上前にさかのぼり、戦国時代（紀元前475-221年）に生きた愛国的な詩人、屈原の伝説に根ざしています。伝統によると、屈原は政府の腐敗に抗議して汨羅江に身を投げました。地元の人々は、彼の遺体を魚や悪霊から守ろうと、太鼓を打ち、櫂で水をはね、川に米の団子を投げ入れました。これらの行動が、今日私たちが目にするドラゴンボートレースと粽を食べる伝統へと発展しました。

岳陽のドラゴンボートフェスティバルは、この古代の伝説を現代に受け継ぐ重要な文化行事です。毎年6月、洞庭湖畔では数十の地元チームが22メートルの伝統的なドラゴンボートで競い合います。各ボートには20人の漕ぎ手、1人の舵取り、そして1人の太鼓手が乗り込み、屈原の時代から変わらぬ形式で競争を行います。祭りの期間中、地元の人々は先祖代々伝わる方法で粽を作り、家族や隣人と分け合います。また、湖畔の寺院では道教の僧侶たちが屈原の魂を慰める儀式を執り行い、地域の歴史的・精神的つながりを強化しています。

この祭りの文化的重要性は国際的にも認められており、2009年にユネスコの「無形文化遺産の代表的な一覧表」に登録されました。ユネスコは、ドラゴンボートフェスティバルが「家族内の絆を強め、人間と自然との調和的な関係を確立する」と評価しています。また、「想像力と創造性の表現を促し、鮮明な文化的アイデンティティの感覚に貢献する」点も高く評価されました。この登録により、ドラゴンボートフェスティバルの保護と継承に向けた取り組みが国際的に認知され、さらに強化されています。

中国の奥地を旅していた私は、岳陽に着いた日にちょうどドラゴンボートフェスティバルが始まったんです。最初は観光客向けのショーかと思いましたが、違いました。湖畔に立った瞬間、その熱気に圧倒されました。龍の頭を模した船首を持つボートが、20人もの漕ぎ手の力強い動きで水しぶきを上げながら疾走する様子は、まるで生きた絵巻物のよう。思わずシャッターを切り続けました。夜には湖畔で屈原を偲ぶ儀式に参加。提灯の明かりに照らされた無数の粽が水面に浮かぶ様子は、言葉では表現できないほど幻想的でした。この体験は、私の中国への見方を完全に変えてしまいました。今度は、もっと中国語を勉強して、また来たいと思います。

• 岳陽フェスティバルで使用される最長のドラゴンボートは、印象的な100メートルの長さがあり、操縦には180人以上の漕ぎ手が必要です。
• 2018年、このフェスティバルは60艘のボートが同時に競争する最大のドラゴンボートレースとしてギネス世界記録を樹立しました。
• レース中にリズムを刻むために使用される太鼓は、重さが50キログラムにも達し、しばしば精巧に彫刻され、塗装されています。
• 一部のチームは、フェスティバルの前に最大6ヶ月間トレーニングを行い、天候が水上トレーニングを許さない時は、特殊なローイングマシンを使って陸上で練習します。
• フェスティバルの粽作り競争では、一日で10,000個以上の粽が作られたことがあり、それらはすべて地元の慈善団体に寄付されました。

岳陽国際ドラゴンボートフェスティバルは通常、旧暦5月5日を中心に3日間開催されます。