聖血の行進
ブルージュの街を彩る信仰と歴史、そして市民の誇り
2026/05/13
毎年春、ベルギーの中世都市ブルージュは「聖血の行進」というヨーロッパ屈指の厳かな宗教行事の舞台となります。聖血の行進(Heilig Bloedprocessie)は、キリストの血が染みたとされる聖遺物を掲げてブルージュの街を巡る、ベルギーを代表する宗教的な伝統祭です。その起源は12世紀末から13世紀初頭にさかのぼります。キリスト昇天祭(アセンション・デー)に開催されるこの伝統行事は、地元市民や世界中から集まる観光客を魅了し、信仰と歴史が織りなす壮大なパレードを体験できます。信仰に心惹かれる人も、伝統や歴史に興味がある人も、ブルージュの“魂”に触れる忘れがたい時間となるでしょう。
教会の鐘の響き、刺繍が美しいローブのきらめき、石畳に漂う香の煙、そして春の花や焼き菓子の甘い香り…。聖血の行進は、ブルージュの過去と現在を結ぶ“生きた儀式”であり、色彩・音楽・コミュニティの一体感が街を包み込みます。
主な見どころ
聖血の大行列
最大の見どころは、1,700人以上の市民が聖書や中世の衣装をまとって街を練り歩く壮大なパレード。旧約・新約聖書の場面やブルージュの歴史的名場面が次々と再現され、クライマックスでは“キリストの血”が納められた聖遺物の小箱が金色の輿に乗せられ、厳かな賛美歌とともに市内を巡ります。観客の静寂と感動が街を包みます。
衣装と装飾
参加者は手刺繍のローブやローマ兵の鎧、聖書の登場人物の衣装、中世の市民服など、細部までこだわった衣装を身につけます。街にはバナーや花、宗教的なシンボルが飾られ、ブルージュ全体が壮麗な野外舞台に。ビロードや金糸の手触り、衣装の重み、何千人もの仮装が織りなす圧巻の光景です。
伝統グルメ&ドリンク
ブルージュ名物のサクサクのフリッツ(フライドポテト)、粉砂糖をまぶしたワッフル、地元のビールや焼き菓子など、食の楽しみも満載。春の花や香の香り、焼き立てのパイの匂いが石畳に広がり、祭りの高揚感をさらに引き立てます。
文化・歴史的背景
聖血の行進(Heilig Bloedprocessie)の起源は、12世紀末から13世紀初頭にさかのぼります。伝承によれば、フランドル伯ディードリッヒ・ファン・アルザス(Thierry d’Alsace)が第2回十字軍(1147-1149)からの帰還時、エルサレムから“キリストの血”が染みたとされる聖遺物を持ち帰り、1150年にブルージュの聖血礼拝堂に奉納したのが始まりとされています。
当初は聖遺物の受難週(イースター)や重要な宗教的節目にだけ披露され、厳粛な宗教儀式として礼拝堂内で行われていました。しかし13世紀後半からは、聖遺物を市内で公開し、信者や市民が参加できる大規模な巡行行事へと発展。ブルージュは中世ヨーロッパ有数の商業都市であり、巡行は信仰と都市の繁栄を象徴する一大イベントとなりました。
16世紀の宗教改革やフランス革命、2度の世界大戦など、数々の歴史的危機を乗り越えながらも、聖血の行進は市民の手で守られてきました。衣装や演出も時代ごとに洗練され、現在では1,700人以上が参加し、3万人以上の観客が見守るブルージュ最大の伝統行事です。2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、ブルージュ市民の誇りと信仰、そして世代を超えた絆を象徴する“生きた歴史”として今も受け継がれています。
参加者の声
聖遺物が目の前を通るとき、街全体が静まり返り、まるで時が止まったような感動を覚えました。衣装や音楽、厳粛な雰囲気に圧倒されました。パレード後、ブルージュのほとんどの家族が何らかの形で関わっていると聞き、地域の誇りと信仰の深さに感動しました。
豆知識
- 聖遺物はブルージュのブルグ広場にある「聖血礼拝堂」に安置されている。
- 戦争や政変の時代も含め、750年以上ほぼ途切れることなく続いている。
開催日程
聖血の行進は毎年5月、キリスト昇天祭の日にブルージュで開催されます。詳細は公式観光サイトや聖血礼拝堂のイベントページをご確認ください。
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