水仙祭り

オーストリアの山里を彩る花と人の祭典


2023/05/31 - 2023/06/03

春から初夏へと季節が移り変わる頃、オーストリア・アウスゼーラント=ザルツカンマーグート地方の静かな谷間が、ナルツィッセンフェスト(スイセン祭り)で一気に華やぎます。毎年5月末から6月初旬にかけて4日間開催されるこの祭りは、家族連れや花好き、文化体験を求める人々など、毎年数万人が訪れるオーストリア最大級の花の祭典です。

バート・アウスゼー、アルタウスゼー、グルンドルゼーといった町々を舞台に、春の魔法、野生のスイセンの美しさ、そして何世代にもわたる地域の伝統を体感したい人にぴったりのイベントです。

主な見どころ

花の巨大オブジェと湖上パレード

祭りのハイライトは、何十万本もの手摘みの野生スイセンで作られた巨大な花のオブジェのパレード。ドラゴンや恐竜、白鳥など、想像力あふれる作品が村の通りを彩り、午前中は町を練り歩き、午後にはブラスバンドや民謡の音色とともに、アルタウスゼー湖やグルンドルゼー湖の水上をゆっくりと進みます。湖面に映る花の彫刻とアルプスの絶景は息を呑む美しさです。

他にも、スイセンの女王とプリンセスの戴冠式、子どもたちのメイダンス、クラシックカーラリー、野外コンサート、伝統音楽やダンス、マジックショーが楽しめる「ナルツィッセンナハト(スイセンの夜)」など、見どころが満載です。

華やかなトラハト衣装と花の装飾美

地元の人々は、鮮やかなディアンドルやレーダーホーゼン、羽飾り付きの帽子など、オーストリアの伝統衣装「トラハト」を身にまとい、祭りに華を添えます。町中にはスイセンの甘く爽やかな香りが漂い、花冠やガーランド、繊細な装飾があちこちを彩ります。スイセンの女王は花のティアラを戴き、プリンセスたちとともに祭りの象徴として登場します。

心も満たす郷土グルメとスイーツ

屋台やレストランでは、シュタイヤーマルク地方の名物料理が並びます。カリッと揚がったシュニッツェル、ジューシーなソーセージ、焼きたてのプレッツェル、粉砂糖をまぶした繊細な焼き菓子…。肉のローストや甘いケーキの香りが花の香りと混ざり合い、地元ワインやシュナップスもふるまわれます。湖畔のカフェで味わうアップルシュトゥルーデルとコーヒーは、山の空気と相まって格別です。

文化・歴史的背景

ナルツィッセンフェストは1950年代末、マリアツェルで生まれたアイデアをもとに、豊かなスイセンの群生地であるアウスゼーラントで1960年5月28~29日に第1回が開催されました。当初は地元経済の活性化と地域の自然美の発信が目的で、観光委員会が中心となってスタートしました。最初の祭りでは、学校の子どもたちや伝統衣装グループ、音楽隊が参加し、日曜のパレードでは花で飾られた車や巨大オブジェが登場。スイセンの女王と2人のプリンセスの選出もこの時から続く伝統です。

1963年には湖上パレードが加わり、グルンドルゼーとアルタウスゼーの両湖で華やかなフロートが披露されるようになりました。1970年代には来場者が2万人を超え、組織委員会が発足。1983年にはテレビ中継の影響もあり、2万5千人の記録的な動員となりました。2013年の洪水や2020~21年のパンデミックによる中止など、歴史の中で幾度も変化を経験しつつ、パレードの形や開催地も時代に合わせて進化しています。

この祭りは、春の到来と自然の恵み、そして地域の結束を祝うものです。数千人のボランティアが準備や運営に関わり、地元の家族や団体がオブジェ作りに挑戦。女王選出や花摘み、湖上パレードなどを通じて、世代や地域を超えたつながりと誇りが育まれています。ナルツィッセンフェストは単なる花の祭典ではなく、アウスゼーラントの人々にとって「自然と共に生きる喜び」と「地域文化の継承」を象徴する、かけがえのない行事です。

参加者の声

日曜の朝早くに到着したら、町中がすでにお祭りムードでいっぱいでした。スイセンの香りとブラスバンドの音があふれ、子どもたちは巨大な花のオブジェに大興奮。今年はフクロウやドラゴンのフロートがあって、どれも何千本もの花でできているんです。湖畔までパレードを追いかけていき、フロートがボートに乗せられて湖を進む光景は本当に幻想的。

豆知識

  • 毎年30万本もの野生スイセンがすべて手摘みでフロート作りに使われます。
  • スイセンの女王とプリンセスは地元の若い女性から選ばれ、1年間その地域を代表します。
  • スイセンを摘むことで、翌年さらに元気に花が咲くようになると言われています。

開催日程

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実際の様子


開催情報

名称 水仙祭り
オーストリア
エリア アウスゼー
開催時期 2023/05/31 - 2023/06/03
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