チーズ転がし祭り

毎年春、イングランドの田園地帯に世界でも屈指の奇想天外でスリリングな伝統が蘇ります。それが「クーパーズ・ヒル・チーズ転がし祭り（Cooper’s Hill Cheese-Rolling and Wake）」です。グロスターシャー州ブロックワース近郊のクーパーズ・ヒルで、5月最終月曜日に開催されるこの祭りには、勇敢な挑戦者と何千人もの観客が集い、急斜面を転がるダブル・グロスター・チーズを追いかけて自らも転げ落ちます。スリルを求める人も、イギリス流の奇祭を体感したい人も、混沌と笑いに満ちたこの光景は一生忘れられない体験になるでしょう。

会場に着いた瞬間から、期待と笑い声、踏みしめられた草の匂いが辺りに漂います。コスチューム姿の参加者が悪名高い丘の頂上に並び、観客の歓声が響き、地元チーズやサイダーの味も楽しめる…五感すべてでイギリスの田舎の“生きたお祭り魂”を味わえます。

伝説のチーズ転がしレース：坂を駆け下りる大混乱

名物イベント・コスチューム・コミュニティの熱気

伝統グルメと地元ドリンク

クーパーズ・ヒル・チーズ転がし祭りの起源は長い間謎に包まれており、最古の記録は1826年ですが、その時点ですでに「古くからの伝統」として語られていました。一説には、丘の共用地で放牧権を維持するための儀式として始まったとも、また別の説では、夏の到来や豊作を願う異教時代の火祭り（かつては燃える藁束や松明を転がしていた）に由来するとも言われています。丘を転がすという行為には、太陽や豊穣、季節の循環を象徴する意味が込められており、地域の自然や農業と深く結びついた祝祭でした。

この祭りは、地元の人々にとって単なる娯楽や観光イベントではなく、世代を超えて受け継がれる誇りと共同体の絆の象徴です。公式には1998年に安全面から一度禁止され、2009年にも中止となりましたが、地元住民の強い意志と団結によって2011年に復活。今や世界中から参加者や観客が集まり、英国らしいユーモアとチャレンジ精神、そして困難を乗り越える粘り強さを体現する“生きた文化遺産”となっています。丘の上で転がるチーズとともに、地域の歴史や誇り、そしてお祭りを支える人々の情熱が、毎年新たな物語を生み出しています。

カナダから観戦しに来ましたが、想像以上のクレイジーさ！観客の熱気、みんなの笑い声、地元の人たちの一体感がすごい。何十年も参加しているというおじさんと話せて、『腕を2回折ったけど絶対やめられない』と笑っていました。

• 丘の傾斜は約50％（26.6度）で、ほとんどの参加者は走るというより転がる形に。チーズは時速130km近くに達することも。
• ダブル・グロスター・チーズは手作りで、重さ3～4kg。レース用にリボンで飾られます。
• 坂の下では地元ラグビーチームが転倒者を受け止める役割。
• 死亡例はないものの、骨折や打撲は日常茶飯事。防護服の着用が強く推奨されます！
• 18歳以上なら誰でも参加可能。当日丘の上に並べばOK。

クーパーズ・ヒル・チーズ転がし祭りは毎年5月最終月曜日（スプリング・バンクホリデー）に、イングランド・グロスターシャー州ブロックワースのクーパーズ・ヒルで開催されます。レースは正午からスタートし、18歳以上なら当日丘の上に並ぶだけで誰でも参加可能です。