聖ルシア祭り
北欧の闇に灯る光の祝祭
2025/12/12
ルシア祭は、スウェーデンの冬の暗闇を照らす光の祭典で、希望と連帯を象徴する伝統行事です。12月、スウェーデンの長い冬の夜が最も深まる頃、「ルシア祭(聖ルシアの日)」が国中の家庭や学校、教会、広場をやさしい光で包みます。12月13日の朝、サフランパンの香りと天使のような歌声が漂うなか、白いローブ姿の子どもたちが“ルシア”を先頭にロウソクの灯りを手に行進し、希望と安らぎをもたらします。冬のスウェーデンで心温まる伝統を体験したい人にとって、ルシア祭は美しさと癒し、そして連帯感を味わえる特別な祭りです。
ストックホルムの大都市から小さな村まで、学校や職場、時には列車の中でも祝われるルシア祭。年齢や国籍を問わず、誰もが光と音楽、そして“つながり”を分かち合う北欧の冬の風物詩です。
主な見どころ
ルシア行列
祭りの中心はルシア行列。夜明け前、同級生や地域の投票で選ばれた“ルシア”が本物のロウソク(または安全のため電飾)の冠を頭にのせ、白いローブと赤い帯をまとい、ティンセルの冠や星の帽子をかぶった“侍女”や“星の子”たちを従えて進みます。暗闇の中に浮かぶロウソクの光、静かなハーモニーで歌われる「サンクタ・ルシア」の旋律は、神聖でどこか懐かしい雰囲気を醸し出します。
主なイベント
ルシア行列は学校や教会、職場、公共スペースなどスウェーデン各地で行われます。ストックホルムやヨーテボリでは大規模なパレードが行われ、テレビ中継されることも。家庭でも子どもたちが歌いながら両親にコーヒーとサフランパンをベッドまで運ぶ“朝のサプライズ”が伝統です。合唱コンサートやチャリティイベント、ルシアクイーンのコンテストも人気です。
衣装と装飾
白いローブは純潔と光の象徴。ルシアのロウソク冠が最も印象的で、侍女はティンセルの冠、星の子は星の帽子をかぶります。窓辺にはキャンドルやコケモモやモミのリース、赤いリボンが飾られ、蜜蝋やグリーンの香りが漂い、キャンドルの温かい光が冬の寒さをやわらげます。
伝統グルメ&ドリンク
ルシア祭の名物はルッセカット(サフラン入りの黄金色のパン)。その甘い香りがキッチンやパン屋に広がります。ジンジャークッキー(ペッパルカーカ)、グロッグ(ホットワイン)、コーヒーも定番。サフランの甘さ、ジンジャーのスパイス、温かいワインの香りがスウェーデンの冬の“ほっとする味”です。
文化・歴史的背景
ルシア祭の起源は、キリスト教の聖人崇拝と、北欧に古くから伝わる冬至の民間信仰が融合したものです。もともと12月13日はユリウス暦時代の「一年で最も夜が長い日」とされ、闇と悪霊の力が最も強まると信じられていました。そのため、家々では夜通し火を灯し、歌やごちそうで闇を追い払う「光の祭り」が行われてきました。
やがてイタリア・シチリア島の殉教者「聖ルチア(サンタ・ルチア)」が“光と希望の守護聖人”として北欧にも伝わり、彼女の名を冠した祝祭が12月13日に定着。聖ルチアはロウソクの冠をかぶり、暗闇の中に光をもたらしたとされ、その姿が現在の「ルシア行列」の原型となりました。
18世紀から19世紀にかけて、貴族や都市の家庭で“ルシア役”の女性が家族に朝食を運ぶ風習が広まり、やがて学校や教会、地域社会へと拡大。白いローブと赤い帯、ロウソクの冠をまとったルシアが、侍女や星の子たちとともに歌いながら行進する現在のスタイルが定着しました。
現代のスウェーデンでは、ルシア祭は「希望と連帯の象徴」として、クリスマスシーズンの始まりを告げる大切な行事です。寒く暗い冬のなか、家族や地域の絆をあたため、光と音楽で心にぬくもりをもたらす北欧ならではの伝統となっています。
参加者の声
イタリアから観光で来て、ストックホルム大聖堂のルシア行列に感動。歌声が澄み切っていて、キャンドルの光が幻想的でした。現地の家族と話し、手作りのルッセカットまでごちそうになりました。
豆知識
- ルシアの冠は本物のロウソクが伝統ですが、安全のため今は電飾が主流。
- ルシア祭当日だけでスウェーデン国内で70万個以上のサフランパンが食べられる。
開催日程
ルシア祭は毎年12月13日にスウェーデン全土で開催されます。最新情報はVisit Swedenや公式プログラムをご確認ください。
開催日程は変更になる場合があります。最新の情報は公式サイトなどをご確認ください。
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